"コロナで変わってしまったこと"といえば。
20年以上住んだ東京を離れて、小田原に移住したのは2019年10月のこと。まったくの異業種である「農業」の世界に飛び込んだ。
覚悟はしていたが、その過酷さは想像をはるかにこえていた。体が慣れるまでの数か月は毎日17時に帰宅をして、夕飯をとったら19時には就寝。翌朝6時までぐっすり眠るようなこともざらにあった。最初の1か月で体重は6kgも痩せ、2年たった今では-15kg。気づけば、20代前半の体重に戻っている。
私の農業修行の2年間は、コロナとともにあった。
とはいえ、毎日の疲労で外食・外出するような気力がほとんどなかった私には、コロナ禍の行動制限でストレスを受けたような実感はほとんどない。
私が移住した下曽我という地域は小田原市の外れにあって、かつては曽我村と呼ばれた農村地帯。そもそも人が密集している地域ではないし、屋外作業が中心の農業という仕事柄、人との距離が密になるようなこともなかった。
コロナで変わってしまったことを題材にここまで書いてきたが、こうして振り返ってみると、コロナが流行するほんの少し前に、私はすでに自身の人生をガラリと大きく変えてしまっていたのだ。
いや、待てよ。ひとつだけあったかな。
ほぼ唯一の外出先であり楽しみでもあった大好きな温泉施設にいけなくなってしまったことだ。あの温泉でどれだけ体の疲れを癒すことができたか。筆舌に尽くしがたい。
私はコロナに心のオアシスを奪われた。
天然温泉『コロナの湯』。
コロナのせいでコロナの湯に行けなくなったというネタのようなホントの話。
*2021年10月に執筆したものを再掲しました。
著者プロフィール
細谷豊明(リブラ農園・代表)/1975年北海道生まれ。イギリス留学後、出版社・編集会社での勤務を経て、食品宅配事業のWebサイト、カタログ制作のチーフエディターに就任。2019年、44歳のときに小田原市に移住し、未経験ながらも農業の道へ。元エディターの経験を生かして、新規就農者の視点から農業の現実をブログにて発信中。小田原市・認定新規就農者。